実況・ゲームキャスター

FPSを中心に複数のタイトルで国内大会を制覇し、アジア大会での優勝経験など豊富な経験と実績を基に2014年からゲームキャスターとして活動。

Q1. StanSmithとして活躍されていたFPSプレイヤー時代のお話を伺います。

岸:
元々は、プロサッカー選手を目指していたんですが、通学に40分以上とられたり、練習詰めだったりと、ストレスが溜まってたんですよね。その時のストレス解消方法がオンラインゲームでした。ちょうどスペシャルフォースが出た頃だったんですが、しっくりこなかったですね。その頃はミックスマスターというMMORPG(Massively Multiplayer Online Role-Playing Game・大規模多人数同時参加型オンラインRPG)にハマっていました。その前はMUのクローズドベータや天上碑、そのさらに前にはタクティカルコマンダーという戦略SLG。そういったゲームを経て、ミックスマスターに行きついた感じです。そのミックスマスターの運営会社が新しくリリースしたのがWarRockでした。

WarRockのクローズドβテストをやってみたら楽しくて、そこからFPSにどっぷりと浸かるようになりました。とはいえ、簡単にうまくなれたわけではないです。そこで、全国大会にも行けたサッカーでうまくなったやり方を、ゲームにも当てはめようと思いました。サッカーで意識していたのは、とにかくうまい人の真似をすること。なので、WarRockでも同じように、うまい人のプレイを毎日追っかけて見ていました。ちなみに、当時のWarRockにはまだフレンドリストやロビーのような機能がなく、ルームに入るとそのままプレイ開始という仕様でした。そのため、誰かと一緒にゲームをプレイするには、自分のクレジットを減らして、その人に会えるまで何度もログインとログアウトを繰り返すしかなかったんです。そんなデメリットを負いながらも、この人と決めた人に毎日会えるようにして、プレイの進め方、打ち方、グレネードの投げ方などを勉強させてもらっていました。僕は役職が衛生兵だったので、そのうまい人を回復させながら進めば野良マッチに勝ち続けられるという思惑もあり、プレイしながら勉強を続けていました。
その後、WarRockクランが実装されたタイミングで、僕が目星をつけていた二人が同じクランに入ったんですよ。これはここに入るしかないと思い、僕もそのクランに入りました。そしたらそのクランには、うまい人がたくさん集まっていて。FPS初心者だった僕は、そこで立ち回りを学びました。そのクランは「自分で考えて行動して、自分で見つめなおせ」「VC(ボイスチャット)には頼るな」という独特のスタンスだったんです。当時はVCが流行りだした頃だったんですが、うちはなぜか使っていない。VCからの指示に従って動くばかりだと、自分で考えるということをしなくなるという考えなんですね。そうすると、動きがワンテンポ遅れて競り負ける。VCを使わない分、動きの精度は繰り返し練習して上げていくしかない。あのクランにいた2、3年のなかで、自分で考える能力や、答えを出す力を身につけられたのは、大きな財産になりました。当時は悩みながら練習してましたけど、結果的にあのやり方が自分にとってはよかったと思います。教え方も同じで、上達のためのヒントはもらえても、直接的な答えはもらえない。自分で考えて、試して、行動して、理解する。そういった考え方は一貫していました。で、悩んで出した答えを「これ合ってますか?」と聞いても、「それは人それぞれだよ」と返ってくる。多分その人なりの正解はあったと思うんですが、それを聞いちゃうと僕もその人と同じ考えになる。個性がなくなっちゃうと。そういう考えだったんですね。だから僕は試行錯誤しながら答えを探して、自分なりに答えを出すんです。その出した答えも、うまい人の動きと照らし合わせてみると微妙に違う。でもそれはお互いに正解なんですよ。それを繰り返して、色んな考え方のレパートリーを身につけたのが17、8歳の頃のことでした。当時教えを乞うていた人とは、15年くらい経った今でもTwitterで交流があります。こういう方たちのおかげで、今の自分はあるのだなとつくづく思います。
結局、WarRockの大会で優勝したのは最初の1回だけで、それ以降はなかなか勝てませんでした。その後、Counter-Strike : Source、Another Day、戦場のカルマ、スペシャルフォース2といろいろなタイトルをやるようになり、実況者という仕事の存在を知ったのもその頃です。強豪FPSプレイヤーが集まるタイトルは一通りプレイをして、国内の6大会で優勝しました。平行してMMORPGもやっていたのでゲーム漬けの生活でしたね。

Q2. 実況を始めたきっかけは?

岸:
大会の実況自体を始めたのは2011年頃からです。衛星放送で大会の実況もしましたが、当時に比べて今は市場の規模が大きくなりましたね。昔は1タイトルで大会が年1、2回あれば多いほうで、賞金なんか当然出ない。優勝商品がPCだったらすげー!みたいな感じでした。
当時、大会の実況といえばyukishiroさんだった。クロスファイアではYamatoNとyukishiroが選手で出場して私が実況、WarRockや他のタイトルで私が選手で出場しているときはyukishiroが実況と順繰りで交代してプレイと実況をやっていました。実況を始めた2011年当時は選手と兼任で頑張っていたものの、2012-2013年頃にはWorld of Tanksの仕事が増えて、これは両立は厳しいぞと。ソロプレイならともかく、チーム練習に参加できないと迷惑をかけちゃうんですよね。社会人もいれば学生もいるので、どうしても合う時間が限られる。それで、2013年から選手は卒業。本格的に実況でやっていこうということで選手活動を徐々に終了し、2014年の1月にはキャスター1本になりました。

Q3.それまでに他のお仕事もされていたのですか?

岸:
高1くらいからアルバイトをしていましたね。e-sports SQUAREが千葉県の市川にオープンする時も手伝っていましたよ。秋葉原に移転後も少しだけ手伝っていましたが、キャスターの仕事が忙しくてなかなか顔は出せませんでした。

 

本当に黎明期ですね。e-sports SQUAREが市川にあったことを知らない人がほとんどだと思います。

岸:
そうですね。ここからどうやってお店が大きくなるのだろうと思っていました。2015年頃かな。趣味で個人的に始めたVainglory(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナゲーム)で世界大会に出ることになりました。選手をやっていく気はなかったんですけど、好きでやっていたら、という感じね。

 

岸さんの選手時代からキャスターになるまでの歴史ですね。

岸:
はい、懐かしいです。過去にもいろいろインタビューを受けたことはありますが、昔の映像や画像はリンクが切れていたり、配信サービスそのものがなくなったりで、あまり記録が残っていないことも多いです。なので、こういうインタビューで昔の活動を知っていただけるのはありがたいですね。

Q4. 本日のインタビュー会場であるSUPERCELLさんのタイトルクラロワ、ブロスタについて。

クラロワを始めたきっかけは?

岸:
クラロワを始めたきっかけは……なんだろう? 元々、クラクラ(クラッシュ・オブ・クラン)はやってたんですよ。でも、何きっかけでクラロワを始めたんだろう? まったくわからないくらい自然に始めています。気が付いたらやっていました。海外の情報も入っていたので、日本でのローンチと同時にプレイしてると思います。いやあ、全然覚えてないです。“ドズル”さん(クラロワを中心に実況動画を発信するYouTuber)とも、知り合っていませんでしたし。多分、日本ローンチのニュースを見て始めたんだと思います。ブロスタを始めたきっかけは、海外のブロスタの改修がきっかけです。元々縦画面だったのが横画面になった時ですね。縦画面の時は、触った感覚が違うなと思ったんですが、横画面になって即ハマりました。

 

クラロワの魅力は?

岸:
まず1つは3分間の中に、あれだけのドラマや感動、興奮が生まれること。こういうゲームはそうそうないです。そして実力差がハッキリと出る。時には運もありますが、運の要素は極力排除されたゲームですね。さらには、8枚というデッキ枚数のバランスが絶妙です。あと1枚あればもっと綺麗な対策ができるし、あと2枚あれば完璧なデッキが組める。でも、8枚だといくら集めても完成しないんですよ。完成はしないけど、強いデッキは組める。強いデッキもあれば、弱いデッキもある。その絶妙なバランスがよく考えられているなと思います。あの8枚という組み合わせは、完成形で、芸術的だと思います。あとは、すぐに対戦できるところ。海外と対戦してラグがないのは凄いです。FPSなんかは、サーバーの位置で有利不利ありますからね。それが関係ないのが、凄過ぎますね。先を行き過ぎています。

 

クラロワリーグの魅力は?

岸:
2019年は韓国でリーグがあったんですが、海外に日本のチームが長期間に渡って住みながら参戦するリーグは、久しぶりだったと思います。2017年以来かな。オーバーウォッチでDeToNatorやSunSister(ともに日本のゲーミングチーム)が台湾リーグに参戦して以来だと思います。日本のチームが、長期間海外に滞在して結果を出したことは、今までなかった。そういう中でクラロワでは、日本のチームが活躍し、結果を出している。日本のeスポーツというワードを知っている人に是非、見ていただきたいです。また、トップ選手の精度の高さから生まれる、魅せるプレイやドラマが素晴らしい。2年間実況をやらせていただいたのですが、本当によかったなと思います。

Q5. ジャンルを問わず、面白いなという選手は。

岸:
嵯峨野昴(ドイツのFCニュルンベルク所属のプロサッカーゲーマー)ですかね。初めて会ったのが8年か9年前。その時はウイイレのプレイヤーだったんですよ。ウイイレで世界2位までいったのに、そのキャリアを捨ててまでFIFAに転向した。転向直後は下手だったんですけど、みるみるうちに日本のトップレベルまで成長しました。海外の大会、オンライン大会、オフ大会、出たいものは全部出てました。嵯峨野昴ほどサッカーゲームへの愛を持っている人には、ほとんど会ったことがないですね。本人には直接言いませんが、頑張って欲しいな、報われて欲しいなって思います。他にも国内でうまいプロはたくさんいるんですよ。でも、愛や情熱という部分ではまだ足りないと思います。だからあえて応援しようとは口にしないです。キャスターという立場上、皆を公平に見ているというのもありますが。それに、僕が応援してるよって言うことでその子が「応援されているんだ、嬉しい」となって、成長する枝が折れちゃうかもしれない。なので僕は黙って、その人が一流になった時に、後付けになるかもしれないですが、直接会った時に言うかもしれませんね。

Q6. 普段は、どんな生活を。

岸:
結婚して、娘が生まれて、このインタビュー時にちょうど7カ月。まだまだ寝かしつけをしたり、お風呂に入れたりしなければいけないので、子供と接する時間を大切にしたいと思っています。今までゲームに充てていた時間を、子供に割いていますね。それは嫌々割いているのではなくて、単純に楽しいからです。ゲーム以外だと、平日は撮影や打ち合わせ。打ち合わせはオンラインで済ませたりもします。僕が家にいないと奥さんもなかなか外に出かけられないので、僕が休みの日は奥さんが外に出かけたり、子供と散歩に行ったり、買いものに行ったり。家族との時間は大切にしています。仕事の時はガッツリ籠もって仕事です。他にも本を読んで勉強したり、雑学を身につけたり、ゲームとは関係ないことも常に触れるようにしています。空いた時間でクラロワとかブロスタやったり、PUBG、フォートナイト、Apex Legendsとか、デスストとか。ゲームは色々しています。

Q7. PLAIDeの使い心地はいかがでしょうか?

岸:
使い勝手でいうと、まず軽い。第一印象がよかったです。今までのゲーミンググラスは、フレームが邪魔だとか、色がついて見えにくいとか、耳の横の部分が厚かったりとか、ヘッドセットをするとグラついたり痛かったりと、あまりいい印象はなかったんですね。でも実際につけてみると、浮くとか痛いということもなくて、色も気にならないし、これは日常使いもいけるなと思いました。今日もPLAIDeを掛けてきましたし、普段からお散歩や出かける時に掛けています。すごく、使いやすいです。掛けたから何かが治るとか、そういう効果の面はわかりませんが、例えばサッカーで言う捻挫防止用のバンテージのように、負担を軽減してくれるものだと思います。目を守ってくれる保険なのかな。こういうアイテムをひとつは持っておくというのは、ゲーマーとして重要なのかなと。目は一生使うものなので、大切にしたいと思います。

 

デザインは?

岸:
PLAIDeはデザインが3種類ありますよね。999.9 VISION LAB.(フォーナインズビジョンラボ)に伺った際に、いろいろテストを受けたあと、3種類全部を見せてもらって選びました。プライベートでは丸眼鏡を掛けたりもしますし、その時はフレームの太いものをかけていました。でも、フレームが細いもののほうがさっぱりして見えたり、クレバーに見えたりするので、細いフレームのものが出てきた時は嬉しかったです。あと、気になるのが形ですね。頬骨の角度とフレームの角度がどれくらいが良いっていうのが自分のなかにありまして。自分に合うもの、似合うものを選んで、スタッフの方からも「いいですね」と言っていただいて満足するものを選べました。

Q8.最後に、岸さんの今後は?

岸:
ゲームに限った話ではないんですが、僕たちの世代が次の世代が通りやすい道を作りたいと思います。ゲームから外れて違う文化をつくっていきたいとも考えているんですが、それが何なのかはまだまだ頭の中で整理ができていないです。ゲーム業界では、今はトッププレイヤーやストリーマーにスポットライトがあたっていますが、若い世代が家族とのコミュニケーションツールとしてゲームをポジティブに使っていってほしいです。ゲームって今、どこでも触れるじゃないですか。携帯でも、アミューズメントパークでも、ゲームセンターでも。よく使えば便利になるものなんだよって、ポジティブに。競技であろうがなかろうが、ゲームをもっと色んな人に楽しんで欲しいと思っています。

岸大河 使用モデル:P-3 col.GREEN